第一期Muse試着会レポート|鏡の前で、最初に出た言葉
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① Museという存在のこと
本題の前に、少しだけ。
この記事に何度も登場する「Muse」について、書かせてください。
ギリシャ神話に、ムーサという9柱の女神たちがいます。
詩人の隣に立ち、芸術家の傍らにいて、創る人に霊感を与えた存在。
絵を描いたのは人間でも、絵が生まれたのはムーサがいたから
——そう言われる存在です。
Lymere Museは、その名前をもらっています。
服作りの専門知識があるわけではありません。
資格はただひとつ、「服が好き」という気持ち。
ブランドの外から応援してくれる人ではなく、ブランドの内側に立って、
Lymereに霊感を与えてくれる人たち。
第1期のMuseは、神話と同じ9人です。
Museになると、こんなことが起きます。
- 発売よりも先に、誰よりも早く新しい一着に袖を通す
- その一着の名前を、自分たちで決める
- 「もっとこうだったら」の声が、次の一着づくりの議題になる
- プロのカメラマンが入る撮影の場に、被写体として立つ
- そして、ブランドの原点に、その名前が残る
ひとことで言えば、「ブランドを一緒に作る」という体験です。
Lymereが10年続いたとき、この9人は10年後も変わらず、
このブランドの原点であり続けます。
この記事は、そのMuseたちと過ごした、発売前のある一日の記録です。
② 試着会の日
2026年7月25日。
第1期Museの試着会を開きました。
発売よりも先に、Lymereの最初の一着に袖を通してもらう日です。

この日、一人ひとりに紙を配りました。
「鏡の前に立った瞬間、どんな一言が浮かびましたか?」
——うまく言葉にならなくても大丈夫です、と添えて。
この記事は、そこに返ってきた言葉の記録です。
③ 鏡の前で、最初に出た言葉
「かわいい・上品」── S
「わっ…かわいいー。大人ピンク」── T
「お花みたいでかわいい」── Ful花
「かわいー♡♡♡」── とみこ
「スカート部分のひろがりがかわいい。『女の子サイコー』と思えるワンピースでした!」── あずさ
「かわいくて上品だと思いました」── N
みんなの紙に、同じ言葉が並んでいました。
私は普段、商品の説明文で「かわいい」という言葉をあまり使いません。
もっと正確に伝えたくて、シルエットや生地の言葉を探してしまう。
でも、鏡の前で最初に浮かんだのは、だれもがこの言葉でした。
説明はあとからでいい。
最初の一言が「かわいい」なら、この服はもう仕事をしている
——そう思えた瞬間でした。

④ 着心地のこと
届いたばかりの製品に、一人ずつ順番に袖を通してもらいました。
「もちもちですごいきもちいい!ウエストマークがある服の方が好きなので、見た感じあまりマークされないかなと思ったけど、きちんとされるし、でも伸びがあるのでめちゃ着やすい!」── とみこ
「すごく着心地が良くて、着ていて気持ち良かったです。丈の長さが絶妙。どんな人でも安心して着れると思います」── T
「型崩れしなさそうで、常にベストなシルエットで着られそう」── S
「細く見えるのに、締めつけない」。
ここにいちばん悩んだので、ちゃんと届いていたことが、
そのまま答え合わせになりました。
「もう少し長いとひざが隠れてうれしい」「着丈がひざ下バージョンも欲しい」。
もっとこうだったら、も遠慮なく教えてもらいました。これは次の一着への宿題です。
お世辞で終わらせず、真剣に言葉を探して、良いところも宿題も両方くれる。
作り手ひとりでは決してたどり着けない場所へ、Museの言葉が連れて行ってくれます。
⑤ どこへ着て行きたいか
「このドレスを着て行きたい場面は?」と聴きました。
返ってきたのは、こんな場所です。
- ホテルの高層階のディナー
- すてきなホテルのレストランへ。女子会もいいね
- 観劇
- デート。「みてみて」って言いたい
- 女の子たちでホテルランチ
- パーティーやレストラン
どれも、特別な日でした。
そのなかで、少し違う場所を書いてくれた人がいました。
「ネイビーは、子どもの行事と、おしごとがらみの食事会に」
観劇やホテルのディナーではなく、子どもの行事と、仕事がらみの食事会。
この一行を読んだとき、作っている間ずっと考えていたことを思い出しました。
いちばん「ちゃんとした自分」でいたい日は、華やかな日ではなくて、
誰かの前で役割を引き受ける日なのかもしれない。
参観日の廊下。取引先との会食。
褒められるためではなく、ただ気後れしないために、服に助けてほしい日。
Lymereは、自信がある日に着る服ではなく、
自信がない日にも、もう一度自分を信じるための服でありたい。
特別な日を待たなくていい、というのはそういうことです。
だから生地を選ぶとき、家で洗えることを条件にしました。ドライクリーニング専用の服は、どうしても「特別な日の服」になってしまう。何度も着られなければ、お守りにはならないから。
そのことを、私が言うより先に、着てくれた人が書いてくれました。
霊感を与える存在——Museという名前は、飾りではありませんでした。
⑥ 名前が決まるまで
この一着の名前は、私ではなくMuseが決めました。
ブランドの最初の一着の名づけを委ねる。
それは、私からMuseへの、いちばん大きな信頼の形です。
テーブルに並んだ候補は6つ。
Papillon/First Bloom/Rilly/First Lymere/Aura de Lilla/Prologue。
花の名前、光の名前、始まりの名前が並ぶ中で、
選ばれたのは唯一「花にとまる側」の名前でした。
「パッと見たときに、浮かんだ言葉でした」
Papillon——蝶。この日から、最初の一着は自分の名前を持っています。

⑦ Papillonの物語
このドレスには、発売前からすでに物語があります。
鏡の前で最初に「かわいい」と言ってくれた人がいて、名前をつけてくれた人がいて、このドレスが生きる思いがけない場所を教えてくれた人がいる。
Lymereの原点には、いつもMuseがいます。
ここから先の物語は、袖を通すあなたと、一緒に書いていきます。
Wear your light. ── Lymere